りんやのおすすめ
ニュースレター2006年1月
第3号より
「油」は体の栄養素として考えると「脂肪酸」に分類されます。
その「脂肪酸」の中に私たちに縁の深いものが5種類あります。それぞれの油を分類すると下の表のように分類されますが、一つの油に一つの脂肪酸だけしか入っていないということはないので、ここでは目立って含有量の多い脂肪酸で分類しました。
(※例えば「ごま油」はオレイン酸が46%、リノール酸が41%含まれています。)
植物油 | 動物油 | ||
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アルファリノレン酸 (α-リノレン酸) |
リノール酸 |
オレイン酸 | 飽和脂肪酸 |
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体内では合成できないので食べなければいけないと言われている「必須脂肪酸」はα-リノレン酸とリノール酸の2種類の脂肪酸ですが、大切なのは両方の脂肪酸をバランス良く摂取することと言われています。しかし現代人はとにかくリノール酸とオレイン酸が多すぎて超アンバランスになっています。私もそうですが、皆さんも油と言えば「ごま油」 「なたね油」「オリーブオイル」ではないでしょうか。この超リノール酸過多の食生活はガンになるリスクを高め、老化と組織の変性の速度を早め、炎症性疾患 や免疫疾患を悪化させる恐れがあると言われています。
逆にα-リノレン酸にはどのような働きがあるかというと、丈夫な細胞膜をつくる、脳や神経系の働きを良くする、ガンやアレルギーを抑える、心臓や脳血管病を防ぐ。そして何と、脂肪の燃焼を助けて肥満を解消する!といい事尽くめです。(肥満の人が油物が好きなのは脂肪を燃焼させるα-リノレン酸を体が欲しているからという説もあります。)
α‐リノレン酸を多く含む食品 |
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えごま油、しそ油、亜麻仁油(含有量が特にすごい!!)、野菜(特に寒冷地で栽培された冬野菜に多く含まれる)、寒い地方で栽培されたくるみ、くり、インゲン豆、大豆、などお米の胚芽の部分、海草類、天然の魚(養殖はダメ) |
では、どうしたらバランスをとることができるんでしょうか。答えは簡単!リノール酸を減らして、α-リノレン酸を多く含む油や食品をたくさん食べればいいのです。
ただし、α-リノレン酸はとても壊れやすい性質なので、調理で加熱するとなくなってしまいます。ですので正しく摂るには、えごま油、しそ油、亜麻仁油を納豆に混ぜたり、醤油を混ぜてドレッシングを作ったり・・・と生で食べる工夫が必要です。そして油は日の当たらない場所で保管し、早く使い切ることが大切です。
食べ過ぎないほうがいいと言われているのは飽和脂肪酸で、要するにお肉や乳製品です。何故ならもうすでに皮下脂肪として体のあちこちに貯蔵してるし、必要なときには余分に食べた糖を分解して自分で作れるから。食べ過ぎるとコレステロール値を上げ、動脈硬化をうながします。
トランス脂肪酸を含んだ油 | 酸化した油 |
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そして、食べてはいけないと言われているのはトランス脂肪酸と呼ばれる“脂肪酸の妖怪”と言われている脂肪酸です。この脂肪酸は食べ過ぎるとガン、心臓病、アルツハイマーの原因になると言われ、食べ物としてはとても危険なものだという見解から、アメリカではトラン ス脂肪酸の含有量を表示する義務が課せられ、ドイツではトランス脂肪酸を含む食品は製造すら禁止されています。
しかしっ!なんと我らが日本では、「諸外国と比較して日本人のトランス脂肪酸の摂取量が少ない食生活からみて、トランス脂肪酸の摂取による健康への影響は小さいと考えられる」(食品安全委員会)
また、トランス脂肪酸が20%~40%含まれていると言われているマーガリンの製造会社が会員となっている日本マーガリン工業会は、「トランス酸の摂取に関しまして、日本人の食生活の現状で何ら問題とはならないと考えております」(日本マーガリン工業会)
と欧米人と日本人の摂取量の違いを根拠に断言されており、厚労省も表示義務などまだ何の方針も決めていません。ですので、私も声高に危険危険!と叫ぶのはいやだなと思ってるのですが、トランス脂肪酸のことを知った4年前から輪屋ではマーガリンの販売を止めました。
「じゃー、マーガリンをやめたら大丈夫かしら?」というとそうではありません。トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングに含まれているだけでなく、“現代の製油法で作られた食用油”にも含まれており、今現在もスーパーの食用油売り場では当たり前のように売られています。「うちの油は大丈夫かしら?」と思った方はお持ちの油のラベルのどこかに“低温圧搾法で作りました!!”という言葉が書いていないか探してみてください。もし表示がなければ今すぐに流しの下の奥の ほうに封印されることお奨めします。
と、以上が現在言われている“食用油事情”の概略でした。
私は常々、「なぜ明治生まれの日本人は体が丈夫で長生きなのか」を考えていて、やはり納豆や味噌、ぬか漬けなどの発酵食品がその答えかなと思っていたのですが、もしかしたらα-リノレン酸が豊富な海草やアジや鰯などの養殖でない日本近海の魚たちを常食して昔の人たちは自然とα-リノレン酸を摂取していたということも一因かもしれません。ただし最近は近海魚の汚染が心配されているので、魚も複雑ですが・・・。
一番最初の“マヨネーズでコレステロールが下がる”という話題に返りますが、“血中総コレステロール値を低下させる植物油”とは“α-リノレン酸が含まれた油”という意味になるので、正確には“しそ油やえごま油、亜麻仁油で作ったマヨネーズはコレステロールを下げる”と言えるようです。