輪屋について

どうして輪屋を始めることになったか、私たちが考える「自然な暮らしの基本」

大岡山の店舗の写真

2001年3月、東京の大田区に住んでいたとき近所の商店街を歩いていたら、
古い小さな暗めの自然食品店の店先に 「自然食品店 経営者募集」
という手書きの紙が貼ってありました。

一緒に歩いていた主人に

「ちょっと待っててね」と言い残して、そのお店に入り
気がついたら「私がやります」と手を挙げていました。

言いながら自分で超ビックリ!!


元々オーガニックが好きだったとか、自然なものが好きだったとか、
そういう訳ではなく至って普通、と言うよりむしろ逆にそんな事を言っている人達って
選民意識の強い人種なんじゃないかと、そういうタイプのお店は敬遠していたくらいの、
そんな私が自然食品店。


外で待たせていた主人に
ショーウィンドウに飾ってた服を「買っちゃった~」と言いながらお店から出てくるみたいに、
「自然食品店やることになっちゃった~」って言ったら
「まじで?!」と話しの流れについていけずにちょっとの間沈黙。

 

ようやく正気に戻った主人と話し合ったのは、
「ところで、自然食品店って何?」って事。

 

それからの数か月間、色んな自然食品店に潜入調査に入ったり、本を読み漁ったり、
農家さんに農業について教えてもらったりしながら勉強していきました。

 

2001年10月に自然食品店「輪屋」をオープン。
卸屋さんへの注文方法も分からず、カブを5束頼んだつもりが50束来たり、
小松菜とほうれん草が見分けられなかったり…。
右も左も分からないとはこの事!ってくらい何も分からないままバタバタの状態で日々を過ごしていました。


そんなある日、40代か50代くらいの女性が商品棚の前に立ったまま、ジ~っと商品を見つめていました。
あまりにも長い間直立したまま商品を見ていらっしゃるので、「何かお探しですか?」と尋ねました。
すると「今、病院でガンだって言われたんです。何を食べたらいいでしょうか?」と言われました。

 

その時、初めて自然食品店が他のお店とは違う責任を持っているという事に気がつきました。

 

わざわざ “自然” と名乗っている自然食業界は、
世の中には “不自然” な食品がありますよという事を明確に示唆している業界なんですね。

 

そこが私が昔から “選民意識” とダブらせて感じていた部分だったのですが、
いざ自然食品業界に飛び込み、
自然食品店で販売されているものと、販売されてないものとの違いを知れば知る程、
自然食を好む人達は “選ばれた民” なのではなく “選ぶ基準が明確な民” なんだなと理解しました。

 

でもよく考えたら、対象がなんであろうと何かを知れば知る程、究めれば究める程、
感覚が鋭ければ鋭い程、見分ける基準ってハッキリしてきますよね。
例えば音楽とか絵とか蕎麦とか・・・。

それを芸術の世界では『審美眼』、サブカルチャーの分野では『オタク』、
趣味の領域だと『通(つう)』と呼ぶんだと思います。

ならば徹底的に自然食における審美眼を養っていこうと決意し、それからの一日一日を重ねてきました。


何が自然で、何が不自然なのか・・・
本来人間が食べるべき食べ物とは何か・・・
極力環境に負荷をかけない暮らしとは、どんな暮らしなのか・・・


私達夫婦もまだ道半ばですが、ある程度は自分達の基準のようなものが出来たように思います。

『食べること、体のこと』

『使う物』

『心のこと』


私達はたくさんの先輩達に色んな気付きを頂きました。
次は、私達が誰かのヒントになれれば幸いです。